著者:ほしの しんぞう
ページ数:71

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 今回の『非自律型爺さん』は 日々の生活において不精な小生の三人の友人がモデルです。非自立と言いますと聞き手にはネガティブで全てを他人に依存して受動的に生きているような老人という印象を与えるだろうと思います。しかし、それでも周囲の人にまたかと溜息をつかせるだけの非自立もありますが、その諦めと同時にペーソスと微笑みを接する人たちに与えることもあるかもしれません。その心理は「甘える者」と「甘えさせる者」ではないでしょうか。もちろん、幼児が親に甘えるのとはだいぶんと違うだろうと思います。また、自分の言葉や行為の「甘え」を無意識に表現したり、ある時には意識的に相手に伝えることもあると思います。英国の喜劇役者ミスター・ビーンは誰でもご存知ですね。演じる時には「小学校中学年生徒」になったつもりで仕草を表現すると、名門オックスフォード大理工系卒のエリート、ローワン・アトキンソン氏は言っています。オックスフォードといえば2020年世界第一位のランキングで、東大や京大でさえ36位、65位ですので、彼がいかに秀才かがわかります。その彼が演技として表現する笑いは前述した意図的な演技と同じようなものかもしれません。仕事中の小生は接遇以外では笑ったことはありませんが、それ以外の時間ではできるだけ周りに笑いを提供しようと努力してきました。今や無意識な仕草に相手は笑ってくれるので、努力もいらなくなりました。笑いは人に色々な効用をもたらすでしょう。もちろん本人にも。 言葉で笑わせる、仕草や雰囲気で笑わせる、いずれも勉強と努力が前提です。相手によって「甘え」や「仕草」の許容範囲を考えなくてはなりません。よって、初対面の相手を笑わせるのはとても難しいものです。いずれにせよ小生の考える「笑い」は、ミスター・ビーン的、かつてのテレビドラマ『泣いてたまるか』主演の渥美清的笑いを手本として考えています。また、その時には無感動なのに、数分たって、相手がニンマリするような笑いは最高位だろうとも思っています。例えば「呉下の阿蒙と言われた呂蒙は己の無智無学を恥じて猛勉強して1年後には慮植をしてその才に驚嘆せしめた。しかし、あなたが勉強もせず意見ではなく単なる感想を述べ続けるなら不毛でしょ」というような類です。しかし、ここで展開されるのはそんな笑いではなく、単純な笑い、中には呆れ、中には立腹するような中での笑いで、この「非自立型爺さん」が読者諸氏の友人になれるのかの実験でもあります。笑って友人にしたい、笑うが友人にはしたくない、あるいは笑いなど起こらない、いろいろな反応を示すご自身が試されているかもしれません。もちろん、笑いだけでなくある事象に対して「喜怒哀楽」全てを表現する自分を見つめ直す良い機会が与えられているのかもしれません。特に立腹の時には注意が要ります。「笑い」の言動や行為の支点と作用点は単純なベクトルではなく、作用すると同時に支点が作用点になる時、笑いの共鳴が起こります。笑う相手を見て自分が余計に笑ってしまう、さらに相手の笑いは増幅するというような共鳴です。人生は短い、よって大いに笑おうではありませんか。

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