著者:平山崇
ページ数:57

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はじめに

 地獄は実在するのでしょうか。この問いに現代人は「何を馬鹿なことを」と答えるでしょう。メタバースで人工的に地獄空間を作ることはあっても、人の手の関与しないところで地獄が成立しているはずがない、というわけです。この信念は、科学的な思考が普及した結果というよりも、万物は人間の支配下にあると考える傲慢さからもたらされたものだと思います。日本で地獄が誕生したのは仏教の伝来と同時です。『日本霊異記』などの思想書が懲罰的地獄の存在を説き、十世紀末には浄土教美術と六道絵が開花して、視覚的に地獄の恐ろしさを民衆に伝えるようになったのです。特に平安末期の戦乱で社会が乱れたことを背景にして地獄の絵巻物が多数制作されました。鎌倉時代に入り武士の時代になるとさらに承久の乱などの争乱が勃発し、六道絵が絵巻物と掛幅で描かれました。これが日本の地獄概念の最盛期だったと思われます。江戸時代は特に現世的世界観が好まれ、彼岸的な地獄は排除されて現代へと繋がります。刑務所で生活するために罪を犯す者もいるくらい地獄は人々の意識から消えています。
 もしも、地獄がリアルな存在感をもって我々の人生に並走していたらどうでしょうか。この世では罰せられなくてもあの世で地獄に落ち永遠に苦しまねばならない、という恐怖心があったら、人は果たして罪を犯すでしょうか。人道的、道徳的な立場からではなく、痛みを回避するために悪いことをしない。そのような生き方が普通になり、悲惨な犯罪も大幅に減ることでしょう。
 この詩集は、地獄を知らず、悪い行いに歯止めのかからない人への、抑止力になることを祈りつつ、書かれました。地獄が本当に存在し、反省なき罪人に責め苦を浴びせ、苦しみの永遠を生きさせることを願います。
 なお本書に収める八つの地獄詩編は源信『往生要集』の八大地獄に基づいており、最初の等活地獄が最も軽く、最後の阿鼻地獄が最も重い地獄です。また本書の参考文献は澁澤龍彦、宮次男『図説地獄絵をよむ』(一九九九、河出書房新社)で、各地獄の描写もこれに拠っています。ただし法廷準備室と事務官は私の独創です。

二〇二二年二月十一日
平山崇

作者について
 中国蘇州大学大学院修了。著書のひとつ『日本文学史』(蘇州大学出版社)」は中国の大学の教科書として使われている。心理士、日本語教師を経て、現在出版社の編集者。主なキンドル本に『新★短編小説を読んで中国語を学ぼう』『北海道開拓史』がある。

 目 次

事務官のモノローグⅠ

児童虐待者よ等活地獄に堕ちよ
いじめっ子よ黒縄地獄へ堕ちよ
強姦社員よ衆合地獄へ堕ちよ
ちっぽけな男よ叫喚地獄へ堕ちよ
誹謗中傷者よ大叫喚地獄へ堕ちよ
堕落教師よ焦熱地獄へ堕ちよ
詐欺師よ大焦熱地獄へ堕ちよ
強盗殺人者よ阿鼻地獄へ堕ちよ

事務官のモノローグⅡ

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