著者:濱ちゃん(濱盛渉)
ページ数:97

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【プロローグ(旅立ち)】
1950(昭和25)年3月、与那国島に10人兄弟の次男として生まれました。父・母・祖母を含め、13名の大家族の中で育ちました。

1965年に地元中学を卒業後、西表島、石垣島で働きます。

1969年11月16日、那覇港を出港して、与論島、沖永良部島、徳之島、名瀬港を経て、3泊4日の船旅。4日目に神戸港へ入港。家族兄弟のため、父に従って、出稼ぎに来たのです。

当時は大阪万国博覧会が開かれる直前ということでものすごく景気が良く、それに関連する大阪の工事現場で父と一緒に働きました。

働く時間は14時間でしたが、給料はなんと沖縄の4倍くらいもらえました。そんな話が島の人たちに伝わり、一時期60名くらいの沖縄出身の人たちと働いていました。

1972年、大阪万博の関連工事がなくなると、千葉県で働くことになりました。千葉県での仕事は某鉄鋼の水道管工場の臨時工で、24時間交代制の昼勤・夜勤に分かれた仕事でした。

昼・夜交代の仕事はきつく、私はこれではダメだと思って退職。

1973年に川崎で新しい仕事に就きました。それがコンクリート圧送車の運転手の仕事でした。この仕事は歩合制だったので、それまでよりは随分稼ぐことができました。

しかし良いことはあまり続かないもので、1974年のオイルショックで、仕事の量が一気に落ちました。会社も倒産寸前となり、収入も当然大幅ダウンです。

次の働き場所を探していたそんな最中、私の人生を変えた寿司業界との出逢いがありました。弟が働いていた寿司店で働くことになったのです。

それまで建設などの力仕事をしてきたので、寿司店での仕事自体に苦は感じませんでしたが、しかし入社以来、四六時中ずっと皿洗いをさせられたのには参りました。

今でこそ皿洗い機で洗いますが、当時は全部手洗いです。その皿洗いは全て新米の私の仕事でした。手の皮がむけて、痛くて風呂にも入れない状態でした。掌が痛くて、早くこの状態から抜け出したかった。

私が洗い場から、仕込み・握り場に移れたのは、入社してから1年経ってのことでした。

私は根っからの負けず嫌いで、「誰にも負けたくない」という強い気持ちで働いていました。そんな私の姿を見ていた先輩から、「おい、お前、握り場に入れ!」と言われた時は本当に嬉しかったです。

ところが、店が満席になると、まだ早く握れないものですから、店長から「お前交代しろ」と言われるのがものすごく悔しかったものです。

この悔しさをバネに、「仕事を1日でも早く覚えよう」「技術を高めよう」「早く一人前になりたい」と、休み時間も惜しまず練習に励み続けました。

入社してから6年後、ようやくチャンスが訪れました。1980年初春のことでした。

社長に呼び出されて、「埼玉で店をやってみないか」と言われたのです。

「働く人がいなくて、店を半年も閉めたままで開けられない状態でいる。設備は全部揃っているからどうだ」と言われたのです。

その店が私の独立1号店で、間口2軒10坪。17席の小さな店でした。父と弟と一緒です。この店で、私たちは全身全霊をかけて挑戦することになりました。

男だったら誰だって、「一国一城の主になりたい」と思いますよね。しかし、それは苦労の始まりでした。でも私は、「成功して島に錦を飾りたい」という大きな夢を叶えるため、頑張りました。

当時は夜9時までの営業で、思うように売り上げが上がらず、四苦八苦しました。そこで、終電までの営業とすることにしました。

3年後にはどうにか月商1千万円を売り上げるようになりました。独立して3年目でやっと一人前の店を持てたのです。

それからがむしゃらに働き、法人設立して2号店、3号店と、気づくと7店舗となりました。

一見、順風満帆のように見えるかもしれませんが、その中には様々な失敗や苦労、痛い目にも遭ってきました。

スクラップアンドビルドで、閉店した店も11店舗もあります。

最大の失敗は、沖縄県那覇市での和食レストラン。170坪の大型店。開店してからわずか10ヶ月で
閉店してしまったことです。1億4千万円の欠損。平成元年のこと。

当時、私はいい気になっていたのです。放漫になっていたのです。「料理さえ美味しければ良い」という思い違いをしていたのです。

お客様のことを顧みず、マネジメントとかメニュー戦略とか、全く無関心だったのですから、本当に恥ずかしいことです。

この失敗で、出店ペースは大幅にダウンすることになりました。逆にこのことが、私には良い薬になりました。

店を故郷沖縄に出して錦を飾ることや、店舗を増やすことや、会社の規模を大きくすることに、夢中になっていた私に気づいたのです。

今までに体験経験して来たことを反省して、働きがいある、より良い会社を目指すため、私自ら考え方を変え、社員と共に色々な勉強会へ出かけて行きました。

そのお陰で業績も良くなり、社員の福利厚生も充実していきました。毎年社員旅行を計画し、ロサンゼルス、ラスベガス、香港、グアム、韓国、国内は北海道、沖縄など、社員の労を楽しみながらねぎらいました。

その後私は還暦を迎えて、お店を社員に譲り、今はのんびり暮らしております。

本書には、私の経験・体験から感じたことを、ありったけの想いで書かせていただきました。この本を通じて何を大事に行動すべきか、物の考え方、解釈の仕方など、次世代の皆様が心地よく暮らせる何かのヒントになればと思います。

どうぞ最後までお付き合いください。

濱ちゃん(濱盛 渉)

【目次】
プロローグ(旅立ち)
第1章 仕事
第2章 家族
第3章 体験からの学び
第4章 濱ちゃんの独り言
第5章 友人から私へのメッセージ
終わりに
お世話になった皆さま
感謝
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