著者:東近 伸
ページ数:271

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[商品について]
―人々の信仰や思想文化から、日本の中世史にあらたな光をあてる―
鎌倉期に幡多郡全域が九条家領として立荘され一条家に伝領された土佐幡多荘について、これまでの研究では主に荘園史の観点から進められてきた。しかし中世社会において、寺院は政治、経済、思想、文化などあらゆる面で地域社会の形成に大きな役割を果たしており、中世地域史においては寺院や仏教文化の研究は重要な意義があるーー『金剛福寺文書』をはじめとする寺社資料や仏像の胎内銘文、勧進状や棟札等の資料を活用しながら、中世土佐幡多荘の僧侶や地域社会に生きた人々の痕跡探り史実を解明しようと試みた示唆に富む地域史研究の書。

[目次]
まえがき
序 章 土佐幡多荘における地域史研究の課題と本書の目的
第一節 土佐幡多荘について
第二節 幡多荘と中世地域史研究の現状
第三節 研究史料について
1 文献史料について
2 金剛福寺文書と近世編纂史料について
3 寺社資料、考古資料、石造物等の知見の活用について
第四節 本書の目的と構成
第一部 金剛福寺の勧進活動と地域社会
第一章 観音霊場―中世金剛福寺の成立
はじめに
第一節 土佐国衙と金剛福寺
第二節 幡多荘の立荘と金剛福寺
第三節 観音霊場の成立
1 知行国主一条家祈願寺としての金剛福寺
2 足摺の地名伝承と補陀落渡海説話
おわりに
第二章 中世金剛福音の勧進活動
はじめに
第一節 建長の回禄と勧進活動
1 慶全の勧進活動と一条家の奉加
2 阿闍梨慶全と中興の祖・南仏上人
3 南仏の置文と金剛福寺院主職の継承
第二節 正応の回禄と寺領の拡大
1 正応の回禄と快慶の勧進活動
2 異国降伏の祈祷と寺社興行
3 一条家の奉賀官米と勧進活動の体制化
第三節 嘉元大検注と津倉渕の寄進
第四節 延慶の回禄と心慶の勧進活動
1 心慶の勧進活動
2 心慶の院主職罷免と再任
3 心慶の譲状に見える後継者村慶と定慶
4 心慶の新免次第と寺領の展開
5 第3期金剛福寺修造完成の時期について
第五節 金剛福寺の院主たち―南仏、快慶、心慶、定慶について
おわりに
補論1 金剛福寺本尊千手観音立像胎内資料について
はじめに
第一節 胎内納入品、結縁書に見る人々の信仰
第二節 結縁交名紙札について
第三節 僧侶の結縁交名について
おわりに
第三章 幡多荘船所と観音信仰
はじめに
第一節 金剛福寺と船所職
1 本郷における香山寺の役割
2 幡多荘の船所
3 中世船所の役割
4 横浜の位置
5 中筋川水運と幡多荘船所
6 船所の運賃と航海安全の祈祷
7 船祭と観音信仰
第二節 末寺観音寺の社会経済活動
第三節 観音信仰と末寺飯積寺の役割
1 飯積寺十一面観音像胎内銘文
2 四万十川水運と飯積寺の役割
おわりに
補論2 飯積寺(いづみじ)十一面観音像造像銘に見える仏師・圓海について
第一節 飯積寺(いづみじ)十一面観音像
第二節 仏師圓海
第二部 寺社資料に見る国人の動向と信仰
第一章 中世の大方郷と国人入野氏
はじめに
第一節 東福寺領土佐国幡多荘大方郷について
1 大方郷の東福寺寄進について
2 東福寺の大方郷支配
3 東福寺再建と諸役免除
4 大方郷の開発と公文家忠について
5 飯積寺鰐口銘文に見える藤原家重と道祐
第二節 一条教房の土佐下向と入野氏
1 一条教房の幡多荘直務支配
2 国衆への官途斡旋
3 籠名について
第三節 寺社資料にみる入野氏
1 長泉寺千手観音菩薩像について
2 加茂八幡宮蔵獅子頭銘文に見える藤原家正
第四節 入野氏の没落
1 一条家の地域権力形成と入野氏
2 入野ねぎ沢の不破八幡宮寄進状について
3 荘園支配の終焉と長宗我部氏の検地
おわりに
第二章 土佐一条家の成立と国人加久見(かぐみ)氏
はじめに
第一節 一条家の幡多荘直務支配と加久見氏
1 文明期の加久見氏と金剛福寺
2 教房死去と直務支配の動揺
第二節 加久見氏と金剛福寺の関係について
1 蓮光寺勧進状について
2 蓮光寺と清水港
3 加久見氏と善快について
第三節 土佐国衆加久見兄弟について
1 宗勝と宗頼について
2 以南宗勝の官途名について
3 今川為和集に見える土佐国衆賀久見兄弟
第四節 蓮光寺鋳鐘勧進の目的と背景
1 蓮光寺鋳鐘勧進状の性格について
2 追善供養の願主について
3 天文三年前後の土佐一条家
おわりに
第三章 四万十川(渡川)合戦と一条兼定
はじめに
第一節 兼定の豊後出陣の時期
第二節 四万十川合戦と幡多の寺院勢力
第三節 長宗我部氏の宗教政策
第四節 キリシタン史料に見える兼定と「長島の城」
1 兼定の書状
2 上関とキリシタン
第五節 元親の南予侵攻と兼定の戸島移転
第六節 法華津氏と使僧の役割
第七節 兼定の最後
おわりに
第四章 中世爪白(つまじろ)の仏教文化と東小路(とうこうじ)氏
はじめに
第一節 覚夢(かくむ)寺釈迦堂と阿弥陀堂
第二節 二河白道図と浄土信仰
第三節 『長元記』に見える爪白殿
第四節 東小路氏の系譜
第五節 地検帳に見る戦国期末の爪白
第六節 検地以後の地域社会の変遷
おわりに
補論1 爪白の石造物について
第一節 覚夢寺の石造物
第二節 爪白の仏教文化と都鄙間交流
第五章 中世幡多荘の世界と下田港
はじめに
第一節 一条家領土佐国幡多荘について
第二節 幡多荘船所と横浜
第三節 中世水運の発達と幡多荘中村
第四節 一条教房の土佐下向と幡多荘直務支配
第五節 下山の材木で再建された京都一条邸
第六節 長宗我部地検帳にみる戦国期末の下田
第七節 不破八幡宮神事の一宮神社神輿船渡御と下田
第八節 一宮神社神輿船渡御神役の歴史的背景
おわりに
終 章 土佐幡多荘の地域社会形成と仏教文化
第一節 結論
第二節 成果と今後の課題
あとがき
電子書籍版あとがき
初出一覧
著者略歴

[担当からのコメント]
地域史の研究は私たちが歴史の授業で習う国家を中心とした大文字の歴史とは異なり、それぞれの地域の人々の生活がダイレクトに伝わるたいへん魅力的な研究分野です。そんな魅力が詰まった本書、日本の中世史への理解を深める一書として多くの方にお薦めいたします。

[著者略歴]
東近 伸(とうちか しん)

1951年 高知県四万十市生まれ
1975年 高知大学教育学部特設美術課程卒業
1975年 公立学校教員として須崎市、土佐清水市、宿毛市、四万十市の中学校に勤務する
2003年 法政大学通信制文学部史学科卒業
2007年 佛教大学通信制大学院文学研究科修士課程修了
2012年 四万十市立下田中学校教頭で定年退職
2014年 佛教大学通信制大学院文学研究科博士後期課程修了
      佛教大学より博士(文学)の学位取得
2023年 現在土佐清水市文化財保護審議会会長、土佐清水市史編纂委員
現住所 高知県四万十市

共著
『大方町の仏像』青木淳編、西村謄写堂、2007年
『中世土佐の世界と一条氏』市村高男編、高志書院、2010年
『土佐清水市の指定文化財』土佐清水市教育委員会、文化堂印刷所、2017年
写真アルバム『幡多の昭和』宅間一之監修、樹林舎、2017年
令和二年度企画展『補陀洛東門開く─蹉跎山金剛福寺』高知県立歴史民俗資料館、2020年
『土佐遍路道金剛福寺道真念庵周辺道調査報告書』土佐清水市教育委員会、宿毛印刷、2022年

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