著者:海野恵一
ページ数:43

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月をみて綺麗だなあと思って時を忘れます。そうした心境になったことは誰でもあります。そうした時間を超越した心は計算できません。よく物事に「没頭」するといいますが、そうした現象はどうして起こるのでしょうか。こうした現象を分析していくと人間が計算できない領域に入っていきます。何が起こるかと言うと、時間が経つのを忘れてしまいます。それ以上に、寝ることよりも今行っていることが好きになり、何時間でも我を忘れるようになります。

私はアクセンチュアに入社して、プログラミングをさせられましたが、嫌でしょうがなかったのです。ところが1年たって、アメリカに実務研修に行って、プログラミングの先端技術を勉強してから、それが病みつきになってしまいました。何年も寝食を忘れて、このコーディングに取り憑かれてしまいました。コーディングをしたいと言うよりも、なにかに取り憑かれたように、何年も没頭しました。

当時はこの自分の精神状態がなぜそうなったのかは理解できませんでした。ただ、そのおかげで、会社のポジションを上りつめることが出来ました。毎日十何時間も仕事をしましたし、人の何倍も仕事をしました。一日中、コーディングをしていたかったのです。

この精神状態は西田幾多郎の哲学で言うところの「絶対無」です。松尾芭蕉が「古池や 蛙飛び込む 水の音」と読んだ無心の心境と一緒です。彼は自然と一体になり、そこに時間を忘れて溶け込んだので、こうした句がよめたのです。自分の存在すら忘れて、自然と一体になるということです。

こうした心境にあなたがなることができれば、あなたの仕事や勉強の成績が飛躍的に向上することが出来ると思います。いやいや仕事とか勉強をしている人が多すぎます。実にもったいないことです。どのようにすれば、こうした時空を乗り越えた心境のなれるのでしょうか。

私は東大を卒業して、50年近くが経ちましたが、未だに、毎日、週7日間、15時間集中して、本を書いています。そうした状態を継続できるようになったのはもちろんそうする訓練をしてきたのですが、努力すれば誰でもなれると思います。そうした今までの経験を話したいと思います。

あなたの心はあなたとは別に存在しています。彼はなまぐさで、じっとしていたいのです。楽しいことには喜んでやりますが、面倒くさいことはしません。ただ、面倒くさいことでも、彼が関心を持ては一生懸命になります。

あなたと違って、あなたの心には手足がありませし、脳だけですから、その気になりますと、何倍ものスピードで作業をしてくれます。そうした工夫を彼に対して語りかけていかなければなりません。一番いい方法はビジュアルに訴えることでしょうし、彼の正義感に訴えることだったりもします。彼は単純ですから、そうした直截的な語りかけは有効です。ですので、テレビのような楽なことにはすぐ飛びつきます。好きなスポーツもそうです。

子供が最も嫌がる辞書引きの話をしましたが、出来ることなら、親が毎日、覚えた単語の復習で、単語の例文を一緒に勉強するのが一番いい方法ですね。ただ、親のほうが勉強をしないとは言うのですが、一緒に勉強しましょうという親は極端に少ないようですが。

フロー状態を一度でも経験できれば、その再現は可能になりますから、あとはどう持続させるかです。本書の冒頭の部分に、私がこの一年半、本を20冊以上書いてきたことを言いましたが、そこから、没頭することのやり方を学んでほしいと思います。

こうしたことが身につけば、仕事も勉強も数倍の成果が出ると思います。寝食を忘れると言う言葉がありますが、まさにそのとおりです。

各章の内容は以下の通りです。

第一章 私の子供の頃はどうだったのでしょうか
第ニ章 社会にでてから初めて、フロー状態を経験しました
第三章 ヤマハ発動機では8年もフロー状態が続いたのです
第四章 あなたは2人います。もうひとりのあなたは心そのものです
第五章 単語の勉強ほどもうひとりのあなたの心である脳を騙すのが大変です
第六章 心をカラにして、フローに入るためにはどうしたら良いのでしょうか

本書はこうした不思議な精神の世界に入って、我を忘れるという現象を分析し、誰でもがそうなれるような方法を解説しようと思います。

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