著者:小原雅博
ページ数:278

¥1,782¥0

* * *

◆僕が東大でゼロから国際政治を考える理由――「はじめに」より抜粋

あなたは、この日本がいま、平和だと思うだろうか。
ありきたりな質問だと反射的にページを閉じようとする前に、
少し立ち止まって、次のことを想像してみてほしい。

小さな海を隔てた向こう側にある国では、いくつもの核兵器関連施設が存在し、
今この瞬間にも核兵器の開発が着々と進められている。

74年前に広島・長崎を襲った核爆弾の何倍もの殺傷能力を持つ核ミサイルが、
1発や2発ではなく何十発も、僕らのいる日本列島を含む
世界に向けて発射できる態勢が整えられつつある。

気まぐれな指導者が発射スイッチを押さないという保証はない。

観光客で賑わう別のある国では、3つのグループに分かれた過激派組織が
コンサート・ホールやレストラン、カフェを次々と襲撃。
銃の乱射や自爆によって130人以上が死亡、300人以上が負傷した。

姿の見えない敵は、サイバー世界でも増殖を続けている。
ある国のハッカー集団は、国家の情報機関と関係を持ち、
日本も標的として、官公庁、防衛・ハイテク産業、
通信・交通・エネルギーなどのインフラ部門を攻撃している。

超大国の大統領はこれに対し、核兵器で応戦すると警告する。

さて、あなたはこれを聞いて、背筋が凍るような恐怖を覚えただろうか。
あるいは、不穏な時代の空気に、底知れない不安を感じただろうか。
それとも、お決まりの警句だと、いつものようにうんざりしただけだっただろうか。

もしそうだとしたら、本書はあなたのためにある。

世界の危機を伝えるニュースは毎日のように報じられ、
僕らはいとも簡単に感覚を麻痺させてしまう。
慣れてはいけないと言われても、同じようなことを何回も言われたら
誰だって慣れてしまうものだ。

でも、今この瞬間だけでもいいから、考えてみてほしい。

1930年代、昭和はじめの日本。大きな戦争もなく、
日々穏やかに暮らしていた人々は、数年後に日本が
大国アメリカと無謀な戦争を始めるなどとは思いもよらなかっただろう。
そして、見慣れたいつもの平和な街並みが
絶望的な焼け野原に姿を変えるとは、想像もしなかっただろう。

平和は、失われて初めてその大切さがわかると言う。
裏を返せば、僕らは目の前にある平和が当たり前のもので、
ある日突然失われてしまうなどとは思わずに今を生きているということだ。

しかしあなたは、平和を失ってもいいと思っているだろうか?
明日にも戦争が勃発して、1分先の未来もわからないような人生を送ってもいいと、
本気で思っているだろうか?

ノーと答えたのならば、あなたがやるべきことははっきりしている。
民主主義国家の一国民として、常日頃から世界の動きをフォローし、
平和や安全の問題を考え、外交はどうあるべきか、周りの人々と議論し、
小さくても何か具体的な行動につなげていくことだ。

ただでさえ忙しい毎日。仕事や人生に関係しそうにないことに
時間と労力を割くなんて億劫かもしれない。興味を持てないかもしれない。

それでも、少しでも考えること、「なぜ」と質問することから始めてみてほしい。
今の平和を続けていくためにも。
そして、そんな批判的思考がこれからのあなたの人生にも
きっと役に立つと、僕は信じている。

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