著者:山崎雅弘
ページ数:26

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第二次世界大戦の終結後、独立を獲得した「旧植民地」はアジアやアフリカに数多く存在したが、南アジアの「イギリス領インド帝国」も、そうした地域のひとつだった。

ヒトラー率いるドイツのチェコスロヴァキアに対する領土要求をめぐり、ヨーロッパ情勢が緊迫していた1938年(開戦の前年)、イギリスは早くも、イギリス軍人の指揮官とインド人の下士官兵から成るインド軍部隊の海外派遣を準備していた。そして、翌1939年に第二次大戦の戦端が開かれると、イギリスはヨーロッパ(およびその周辺)とアジアの両戦域にインド軍部隊を送り、ドイツ、イタリア、日本の枢軸軍部隊と戦わせた。

戦史研究の観点から見ると、第二次大戦期のイギリス連邦(コモンウェルス)軍に属したインド軍部隊として、北アフリカおよび地中海戦域で数々の戦功を重ねた第4インド歩兵師団、太平洋戦争の序盤に英領マラヤとシンガポール攻防戦で日本軍と戦った第9、第11インド歩兵師団などが比較的有名である。だが、イギリス本国とインドの関係や、インド軍とはどのような組織であったかについては、日本ではあまり知られていない。

また、太平洋戦争期のサイドストーリーとして、英領マラヤとシンガポールの戦いで日本軍の捕虜となったインド兵で組織されたインド国民軍が、スバス・チャンドラ・ボースを指導者とする自由インド仮政府の軍隊として、1944年のインパール作戦に参加した事実はよく知られている。しかし、ヨーロッパのドイツ軍とイタリア軍でも、同様に捕虜のインド兵で小規模ながら義勇兵部隊が編成されていた事実については、知る人は少ない。

つまり、第二次大戦に参加したインド兵の中には、苛酷な運命に翻弄される形で枢軸国側の捕虜となったのち、連合国との戦いに身を投じる者も存在していたのである。

本書は、軍事と政治の両面から第二次大戦期のインドに光を当て、敵と味方に分かれて戦ったインド軍諸部隊の奮戦の足跡と、戦前・戦中・戦後の各時期にインド国内で繰り広げられた政治的な独立闘争の歴史について、俯瞰的に読み解く内容の概説書です。2017年7月、学研の雑誌『歴史群像』第144号(2017年8月号)で、B5判11ページで発表されました。

日本では、チャンドラ・ボースのインド人義勇兵部隊など、日本軍に味方したインド人の物語はよく知られている半面、第二次大戦全体におけるインドの位置づけや、インド人から見た戦争と日本軍の評価に関する情報はあまり知られていません。本書が、第二次大戦以前のイギリス植民地時代から、苛酷な戦争を経て独立に至るまでのインドの歩みを、俯瞰して理解する一助となれば幸いです。

《目次(見出しリスト)》

◆連合国側と枢軸国側の両方で戦ったインド人

《第二次世界大戦前のインドが置かれた状況》
◆イギリス領インドの独立運動
◆第二次大戦の勃発とインド独立運動の分裂

《英連邦軍の一員として戦ったインド軍》
◆第二次大戦勃発時のインド軍部隊
◆北アフリカと地中海戦域での激闘
◆英領マラヤ、シンガポール、ビルマでの戦い

《枢軸国陣営で戦ったインド人部隊》
◆藤原岩市少佐の「F機関」とインド国民軍(INA)
◆チャンドラ・ボースと「自由インド仮政府」
◆ドイツ武装親衛隊のインド人義勇兵部隊

《第二次大戦の終結とインドの独立》
◆インパールで崩れ去ったボースの夢
◆二つの国家を生んだ英領インドの独立

《ミニコラム》
◆チャンドラとビハーリー 二人のボース
◆インドとパキスタン その後の関係

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