著者:六角大地
ページ数:79

¥1,250¥0

本書「はじめに」より

私は30年以上にわたって強迫性障害に苦しみましたが、今は安定した状態を10年以上キープしています。完治といってもいいかもしれません。私は、自然治癒したわけではなく、あることをしていたら自然に治っていきました。そのあることとは、「パニック障害の治療」です。

私は30代半ばで「パニック障害」を罹患したのですが、パニック障害の治療を行っていると、強迫性障害も自然に治っていきました。この「自然に治った」という部分がとても重要ですので覚えておいてください。

私は、パニック障害の治療ではSSRIを服用しましたが、「SSRIを服用すれば強迫性障害は治りますよ」というお話をしたいわけではありません。「単にSSRIを服用しただけでは強迫性障害は治らない」と思っていますし、実際に強迫性障害を薬物療法だけで治療した場合、再発率がとても高いことはわかっています。そうした理由で、SSRIを服用しても、「プラスアルファ」がなければ、強迫性障害は容易に再発してしまうと思います。

私から読者の方にお伝えしたいことは、「プラスアルファは何だったのか?」ということと、「ほとんど意識することなく、強迫性障害を治せた」ということです。

プラスアルファからお話ししますと、これは「不安障害用にカスタマイズした認知療法」です。私は、この認知療法に「回復確認法」と命名しましたが、特別なことは一切しません。多くの不安障害患者は、私から見ると「丁寧さに欠ける治療」をしていますが、回復確認法はそうしたことが起きないようにした治療法です。詳しくは本書の中で説明をしています。

「強迫性障害を治そうと思っていなかったのに治った」という事実は、とても大きな意味があります。なぜかといいますと、「行動療法をほとんど使わずに治せた」ということと「認知療法は不安障害全体に効果があるかもしれない」ということを意味しているからです。

行動療法とは、端的に言えば「好ましくない行為の減少」に注目した精神療法です。強迫性障害患者には強迫行為(本書では、「オマジナイ行動」と呼びます)があるため、一見、強迫性障害の治療には行動療法が適しているように見えます。しかし、それは治療の本筋ではないと私は考えています。治療の本筋は、「不安を軽減させること」と「対応能力を上げること」です。

行動療法は苦痛を伴う時がありますが、私はほとんど使わないで治りましたので、自分自身の強迫性障害の治療については、「ラクに治った」という印象しか持っていません。行動療法に何度も失敗して、「行動療法はキツイ」というイメージを持っている方には、本書は参考になるかもしれません。

注意して頂きたいのですが、私は行動療法を否定しているわけではありません。「認知部分に働きかける行動療法」はとても意味があると思いますし、病状や治療の局面によっては、行動療法がメインになることも十分あり得ます。

本書は、強迫性障害の精神療法を軸に説明をしていますが、認知療法は応用が効くので、強迫性障害以外の不安障害の方も対象です。「他の疾患は関係ない」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、知っておくと役に立つことも多いです。

私は、物心ついたときには強迫性障害を患っていましたので、おそらく6歳以前には罹患していたと思います。手洗いの症状はありませんでしたが、確認行動やオマジナイ行動を繰り返していました。罹患したのがあまりにも早かったため、「病院に行く」という発想がなく、30年以上放置してしまいました。苦労してきた期間が長かったので、皆さんにはそうならないようにして頂きたいです。

尚、私はお医者さんではありませんので、本書を基に医学的な判断は行わないでください。本書は、元患者の立場から述べています。

2021年 4月 精神保健福祉士 六角大地

【目次】
はじめに
要約
本書の構成
第1章 不安の公式
第2章 認知療法
第1節 概要
第2節 自動思考
第3節 不安障害患者の自動思考
第4節 認知療法の成功のコツ
(1)柔軟な思考
(2)目標設定
第3章 行動療法
第1節 行動療法の概要
第2節 学習理論
第3節 スモール・ステップ
第4章 認知行動療法
第1節 認知行動療法
第2節 暴露法
第3節 暴露反応妨害法
第5章 認知療法と行動療法の違い
第1節 プロセスの違い
第2節 認知療法と行動療法の関係
第6章 深層心理
第7章 回復確認法
第1節 回復確認法の概要
第2節 回復確認法のポイント1(情報収集)
第3節 回復確認法のポイント2(目標設定)
第4節 回復確認法のポイント3(対応能力の向上)
第5節 回復確認法のポイント4(待ち方)
第6節 回復確認法のポイント5(刺激量)
第7節 補足
第8章 学習と学習理論
第9章 薬物療法
第10章 筆者の体験談とその考察
第1節 時系列
第2節 解説
第11章 不安の大きさのコントロール
第12章 カスタマイズ能力の重要性
第13章 強迫性障害の治し方
第14章 暴露反応妨害法(実践編)
第1節 暴露反応妨害法の問題点
①持続性の問題
②治療全体に寄与しにくい
③治療に苦痛を必要とする
④治療法自体がプレッシャーの発生源になる
⑤効果判定が難しい(エビデンスが積み上がりやすい)
第2節 暴露反応妨害法の利点
第15章 自分で治療することの大切さ
第1節 書籍からの勉強
第2節 再発への対応
第3節 アドヒアランス
第16章 不安障害の回復のポイント
第1節 不安障害(共通)
(1)自動思考
(2)自動反発
第2節 強迫性障害
(1)自動消失
(2)自動対応
第3節 全般性不安障害
第4節 社会不安障害
第5節 パニック障害
第17章 イメージトレーニングとメソッド
第1節 イメージトレーニング
第2節 メソッド
あとがき

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