著者:富岡秀雄
ページ数:304

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1.身の上ばなし、2.シングルアクション、3.タコ飯とシャコの刺身と、4.サンヨウさんの願い、5.二年生の夢、6.プラットフォームの六編の短編小説からなる。新聞などの書評でも高い評価を受けており、その一部を以下に紹介する。
・身の上ばなし
〔書評〕人間のからだが日を追って変身を遂げラクダになってしまう寓話。語り手はその動物園のラクダで、聞き手は行く先がなく動物園に通っているオバアチャンという設定。勤め人の頃の風刺を利かせた人物描写が面白くて読ませてしまう。少年時代のボーイソプラノ合唱団で脚光を浴びていた頃の美しい挿話と、後半のグロテスクな話が対照的。またフィギュア好みの美人の女性の登場などもあり、美醜入り混じった効果が絶妙。同人雑誌の小説の幅の広さに圧倒された。【同人誌“弦”代表 中村賢三】 弦、一〇四号(二〇一八年十一月一日)、同人誌の周辺より。
・シングルアクション
〔書評〕定年後することもなく図書館通いをしている「私」が、うたたね中に膝に置かれたレジ袋の中に拳銃を発見する。ネットで調べ、手入れをするうちに、次第に屈折した愛着と大胆さが出てくる。図書館常連の推理マニアの女に秘密を見破られるサスペンスも含め、緊迫と期待を巧みに操る力量が感じられた。偶然入手した一丁の銃に左右される人の心の脆さと、変身の可能性を描いた作品としては、中村文則のデビュー作「銃」が思い出されるが、本作はその老人版といっていい。社会から追放されたように夢や希望をなくした老人が、銃の不法所持で元気になるというシニカルな発想がどこか痛快だ。【文芸評論家 清水良典】 朝日新聞 二〇一七年五月三十一日 東海の文芸欄。
・タコ飯とシャコの刺身と
〔書評一〕一泊旅行に出かけるフェリー乗り場で妻とはぐれてしまった老人を描いた富岡秀雄の「タコ飯とシャコの刺身と」が面白かった。いつの間にか妻だけでなく乗ってきた車までなくなっている。所持金もない。交番へ行っても痴呆扱いされ、介護施設へ送られる。主人公が痴呆なのか、周囲に誤解された不運な人間なのか、読者の中でも判断が揺れるような書きぶりが成功している。【文芸評論家 清水良典】 朝日新聞、二〇一五年十月二十八日、東海の文芸欄。
〔書評二〕ユーモアに溢れた物語を久しぶりに堪能した。最後までハラハラ読ませ、オチがあり、ほっとする読後感であった。登場する人物が全て憎めないキャラクターの持ち主で戯画化されている。主人公がホームレスかと間違えられ、認知症の徘徊老人に仕立て上げられていく過程も秀逸である。新米警察官がいかにも職務に忠実であるがゆえに、かえって話をややこしくしていくのも面白い。退職して何もしないで一日中家でゴロゴロしていている粗大ゴミのような亭主でも、三度の食事を用意しなくてはならない。妻がそう思って愛想を尽かして家を出て行くことがあるかもしれない。そんな男の不安感も漂い、笑っているだけでは済まされないリアルさがある。世相を反映したエスプリも効いている。【同人誌“弦”代表 中村賢三】 弦九十九号、二二十頁(二〇一六年)同人誌の周辺より。
・サンヨウさんの願い
〔書評〕発達障害の青年が派遣先の工場で暴力事件を起こして逃走した先で、人の良い老人に助けられる話である。今日の社会からなくなる寛容さをたたえたメルヘンのような短編だ。【文芸評論家 清水良典】 朝日新聞 二〇一九年四月二十五日 東海の文芸欄。

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