著者:黒薔薇 アリザ
ページ数:12

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 反出生主義といえばデイヴィッド・ベネターのインパクトも強く、その書籍のタイトルが『生まれてこないほうが良かった』であるため、日本の知識人への当初の受け入れられ方は、文字通り生まれてこないほうが良かったか否かという問いに集中した[現代思想2019年11月号]。その後森岡正博は『生まれてこないほうが良かったのか?』においてショーペンハウアーの反出生主義思想を紹介している。
 ショーペンハウアーの反出生主義は、「生きようとする意志」の徹底的否定にある。そして射精を嫌う彼の思想にはセックスを否定する面がある。この点、ベネターの反出生主義よりも論理的に首尾一貫していると言えよう。ベネターは避妊や中絶をすれば、セックスの快楽を容認する。また反出生主義の中には結婚するものもいる。
 しかしそれらは愛着という苦痛を生み出すものである。詳細は『感情主義から見る反出生主義の矛盾: 正しい反出生主義の構築を目指して』の中で論じたが、反出生主義を理性で構築するのであれば、そして反出生主義を、苦痛を減らそうとする思想であるとするならば、愛着も捨てねばならないだろう。こうしたことを考えるとショーペンハウアーの生きようとする意志の断滅、その先にある餓死という思想の妥当性が見えてくる。ショーペンハウアーの思想と反出生主義は、今再考されるべき時が来たのである。

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