著者:上田達
ページ数:121
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2012年8月21日、僕はやっと取れた会社の夏休みを利用して、アンコール遺跡を訪れるために、炎天下のカンボジアへ出発した。写真をたくさん撮ってきたかった。とくに、最近ようやく人が入れるようになり、徐々にその全貌を現わしつつあるベンメリア Beng Mealeaというところへ行って。
その年の12月2日、山梨県中央自動車道・笹子トンネルの崩落事故で、僕は他界する。当時、東神田のシェアハウスに住んでいた4人の仲間たちとドライブに出かけた帰りのことだ。いつも首から提げていた愛用の一眼レフと一緒に、僕はそのまま、カンボジアよりもう少し遠いところに旅立ったんだ。
あれから3年、趣味で撮りためた大量の写真データが収まる僕のアップルコンピュータの画面を、両親がようやく立ち上げてみてくれた。水上の家々や樹木、動物、奇妙な形の建造物、いまも鬱蒼とした密林の奥に打ち捨てられたままの Beng Mealeaの圧倒的な光景を!
いま、僕には大好きなREDIOHEADのPYRAMID SONGが聴こえる。無類に美しいメロディと、息を呑む言葉が、耳に飛び込んでくる。暗いトンネルへ消えた僕たちの、愛する家族や友達のところへ帰れなかった僕たちの叫びのようだ。どうか少しだけ、耳を傾けてください。そして、あの夏の日、僕が見た同じ風景のページを、少しだけ捲ってみてください。
その年の12月2日、山梨県中央自動車道・笹子トンネルの崩落事故で、僕は他界する。当時、東神田のシェアハウスに住んでいた4人の仲間たちとドライブに出かけた帰りのことだ。いつも首から提げていた愛用の一眼レフと一緒に、僕はそのまま、カンボジアよりもう少し遠いところに旅立ったんだ。
あれから3年、趣味で撮りためた大量の写真データが収まる僕のアップルコンピュータの画面を、両親がようやく立ち上げてみてくれた。水上の家々や樹木、動物、奇妙な形の建造物、いまも鬱蒼とした密林の奥に打ち捨てられたままの Beng Mealeaの圧倒的な光景を!
いま、僕には大好きなREDIOHEADのPYRAMID SONGが聴こえる。無類に美しいメロディと、息を呑む言葉が、耳に飛び込んでくる。暗いトンネルへ消えた僕たちの、愛する家族や友達のところへ帰れなかった僕たちの叫びのようだ。どうか少しだけ、耳を傾けてください。そして、あの夏の日、僕が見た同じ風景のページを、少しだけ捲ってみてください。
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