著者:犬屋敷 建
ページ数:40
¥700 → ¥0
この本の目的は、企業型確定拠出年金の上手な運用によって、より豊かな老後資金を得るための方法を、加入者の皆さんにお知らせすることです。
私はかつて50歳代で別の企業に転職しましたので、2度目の退職金は宛にしていませんでした。制度が企業型拠出年金の制度に移管された時も、関心もなく、そのままにしておきました。自分がどんな商品を購入しているのかも知りませんでした。退職前になって確認すると、60歳の時点よりわずかですが、減っていることがわかりました。60歳を過ぎて積立が無くなり手数料(口座料)だけが残ったためです。
退職後、少し投資のことを勉強し驚きました。
例えば、三菱UFJ銀行で100万円の定期預金をしても、直近では利子0.001%ですから年間の利子金額は10円です。さらにこれに20%の税金がかかります。つまり100万円を1年預けてもたった8円の収益にしかなりません。
ところが株は違います。三菱UFJグループの株の配当は4.7%です。100万円で株を購入すると4万7千円の配当金(20%の税金はかかりますが)が付きます。これを次の年の株購入に当てると、わずかですがさらに配当金が増えます。複利で増えますから10年20年と経つと徐々に影響が出てきます。その上、株価が上がれば合わせて増えますから、年間10%以上のリターンも十分ありえます。リターン10%を30年積み上げれば、一方は100万円のまま、かたや800万円以上にもなるということです。
「真面目に働き貯蓄する」というのが、これまでの日本人のライフスタイルでしたから、今も日本人の個人資産51.5 %は預貯金で、株式・債権は18.1%です。アメリカ人が預金13.5%、株式・債権52.5%なのとは対照的です。
その結果、退職したアメリカ人の老後の資産は、同じ様に働いて退職した日本人のそれよりはるかに大きなものとなっています。
違いは、貯蓄と投資に対する価値観です。
しかし、今や預貯金では元本は増えず、退職金も減少しており30年後には平均1000万円になるのではと言われています。また年金は現役世代の6割ですが、今後はさらに減ります。真面目に勤め上げても、多くの労働者の退職後の生活は先細りなのです。企業や国を頼るだけではなく、自分なりに資産を運用する必要性は“待ったなし”です。
そのための一つの方法として、企業型拠出年金という、投資型の優遇制度が作られました。
これを上手く利用しない手はありません。
ではどの様に投資すれば良いのでしょうか?
日本の経済は、よく言われる「失われた20年」の停滞期間のため、GDP(国内総生産)は殆ど増えていませんでした。一方その間世界経済はGDPで3倍の成長をしています。投資に詳しい人でなければ、一般論で言えば、日本に投資するより世界に投資する方がよいことは明白です。
お金を増やす仕組みを、先進国では子供の時代から学校で教えますが、日本にはそのような環境はありません。だから多くの労働者は知らなくても無理のないことだったのです。
国民が知らないから、企業型確定拠出年金を導入した企業では、運用について管理会社から従業員に対して丁寧な教育をすることになっています。しかしその教育は十分なものではなさそうです。
しかし、ことは個々人の将来の人生に関わる重大な問題だけに、十分な理解を持ってもらう必要があります。
このような認識のもとに、この度金融の知識のあるライターさんに原稿を依頼し、さらに年金や退職金制度のスペシャリストの方にコメントをお願いしてできたのが本書です。
読者の皆さんはこの本を入門書としてお読み頂き、必要ならすでに配布されている「企業型拠出年金加入セット」などを見直し、自分にあった運用を進めて下さい。
確定拠出年金の制度は長期、積立が原則となっており、これに幅広く投資する分散を加えると、これは金融庁も推奨する安定した運用方法です。本書ではこの考えに立った運用を説明して行きます。
運用というのは実質投資ですから、自己責任の4文字がついて回ります。自己責任と言われると停止してしまうのが日本人ですが、リスク・ゼロの世界はこの世にはありません。
ウイルスや細菌さえも、常にリスクを避けるため日々変化・成長しています。
新型コロナのワクチン接種も自己責任ですが、年配者は競ってワクチンを求めました。このようにリスクを知り、全体としてよりリスクを減らす選択をするのが賢明なあり方です。
未来に期待して、特に若い人は積極的に運用して下さい。
退職の近い方は、状況に合わせて安定性重視の商品に変更するのが、全体としてのリスクを低減する方法かも知れません。
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