著者:小林幹夫
ページ数:73
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中国の人口問題は歴史の逆説に満ちている。建国後初の人口調査で中国の総人口は6億であったが、それから半世紀を経ずして13億に膨れ上がった。マルサスは人口が1、2、4、8という乗数で増加しうるものとすれば、食物は1,2,3,4という比例で増加しうるに過ぎない、と指摘した。
共産党指導の中国で人口は2.5倍余になったが、食糧は5.3倍余となった。新中国の半世紀の実績はマルサスの指摘に反して、中国に過剰人口が存在しないことを証明しているかに映る。
中国人1人が消費する食糧は半世紀で、2倍に膨れ上がった。それでも、買い上げ価格を引き上げたため、食糧備蓄が過剰で食管会計が赤字になり、生産調整までする時期もあった。マルサスの予言は外れっぱなしになるのか、あるいは「毛沢東が仕掛けた時限爆弾」と揶揄されてきた中国の人口問題が爆発する日がやって来るのか。
人口の高齢化によってマルサスの予言とは異なった別の形で、中国の人口爆弾 は爆発しようとしている。
中国の生産年齢人口(15歳から59歳)は2012年、減少に転じた。また60歳以上の人口は2億人を突破し、総人口に占める比率は約15%に達した。それと軌を一にして経済成長率は10年続いた2ケタ成長から1ケタに減速した。
輸出と投資に依存した経済成長が限界に達した。この二つを支えた「影の銀行」(シャドーバンキング)機能にも陰りが生じた。
さー、これから中国はどうなるか。
中国は、2020年ごろ、世界史上最大の14億近い人口を抱える人口超大国になるとみられる 。しかし巨大な総人口に占める若年人口の不足という人口爆弾が各地でさく裂し、経済不振を招来するだろう。若年人口の減少は経済成長率の伸びを鈍化させる。定年を延長しても、退職期に当たる60歳前後の世代は(文革世代で教育が不在の時期に青年時代を過ごしたため)、労働の供給増という点では効果が小さい。農村戸籍の農民工に都市戸籍を与えても、中国経済が必要とする若く優秀な人材をこれまでよりも、多く確保できる目途はたたない。
①資源とエネルギーの不足②環境汚染と水不足―という人口増加に伴う二つの問題はさらに深刻化し経済成長の足かせになる。食糧供給は輸入や遺伝子組み換えなどバイオテクノロジーの発達で増える可能性はある。しかし、耕地の砂漠化や宅地化の進行によって作付面積が減少し、さらに1人当たりの消費量も増加し、人口が増加するなどの要素を勘案すると、食糧の供給不足はまず避けられないだろう。中国の食糧の輸入量は今後、増え続け、世界の食糧価格を押し上げる要因となるのではないか。
世界の人口は国連人口局が発表した予測によると、2001年の61億から2050年には91億5千万に増える。最貧国と呼ばれる48カ国の総人口が今の3倍に達し、世界人口の90%が途上国に住む、という推計もある。
中国の食糧輸入増加は世界的食糧不足に拍車をかけ価格高騰を招き、貧しい食糧輸入国に打撃を与えるだろう。
こうしたことから中国は習金平政権の経済改革が失敗すれば、経済は減速し、近い将来、年率4から5%台に成長はダウンするかもしれない。発展途上国でありながら途上国の強み(豊富な若年労働力など)を喪失した中国は老いた大国ゆえの悩みをいかに解決するのだろうか。
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