著者:川端俊弘
¥499¥0

東京で働いていたデザイナーが、“あること”をきっかけに、長野県上田市へ移住した。

アウトドアが大嫌いだった著者だが、移住後に突如として狩猟に興味をもち、猟師の免許を取ることを決意。そして、散弾銃を持って山に入り、実弾を撃ち、猪や鹿を仕留め、自らの手で解体し、それを食べるという生活に切り替わっていく――。

猟師の家系に生まれたわけでもなく、普通に東京で生きてきた著者が、初めて鉄砲を撃ち獲物を仕留めたときの気持ち、目の前で生物が息を引き取っていくときの心情などをリアルに綴った一冊。

著者がハマっている、ひとりで自由に狩猟をする「単独猟」の魅力も満載。「移住」と「狩猟」に興味のある人におすすめ。

以下、本文より紹介。

●はじめに
 
 一九八一年、僕は福岡県北九州地方に生まれた。家のまわりは遊ぶ場所に困らないほどの自然に囲まれていたが、僕は外で遊ぶよりも家でゲームをしている時間のほうがずっと長い子どもだった。
 小学生の頃、「外で遊ぼう」としつこく誘ってくる友達のクニオ君に「俺はドラクエ5がやりたいんよ! 黙って隣で見ちょって!」と、ブチ切れたことがあった。今思い返すと、とんでもない奴だ。まぁ、その頃はとにかく外で汗をかくことが嫌いだったのだ。
 虫も嫌いだった。虫が嫌いなのは、なんとなくそのほうが上品なキャラが立って女子にモテると思ったからだ。小学生のくせに女子の目を意識するとは、我ながらちょっとどうかと思う。
 そういえばジャージも着ない子どもだった。ジャージを着てドッジボールをする友達を「ダセえ服着ちょんなあ」と内心笑い、僕はジーパンかチノパンを履いていた。お気に入りのチノパンの膝が破けたのがなんだかかっこよくてそのまま履いていたら、ある日おばあちゃんにアップリケをつけられて泣いた記憶がある。そうそう、髪の毛にもこだわりがあって……。
 と、話を続けていると終わらなくなってしまうが、要するに僕は、山や川で遊ばない、「小太りの中二病少年」だったのだ。

 見た目ばかりを気にするインドア派の少年はそのまま歳を重ね、地元の高校に入学、そして卒業をした。大学の進学先を決める際に、父から「日本の中心を一度見てこい」と言われ、その言葉のままに東京の大学へ進学。
 入学後は何の気の迷いか馬術部に入ってしまい、日本の中心「東京」を見に行ったはずが、一年中、厩舎のある「神奈川の田舎」で馬の世話をすることになった。そこで現在の奥様と出会った。当時僕は馬術部の別の美人と交際していたが、後輩だった奥様の吸血鬼みたいな肌の白さとモデルのような顔立ち、そして野良猫のような警戒心があるのに変な部分で抜けているところに惚れてしまったのだ。
 知り合った当初、奥様は僕と全く話をしてくれなかった。一年かけてやっと少し話をするぐらいにしかなれないほどの極度の人見知りの人だったが、奥様の扉を何とかこじ開け、交際に至った。その結果、二股のような感じになり、僕は「二股最低キザクソ男」として女子部員たちにひどく嫌われてしまったことも、今となってはいい思い出である。

 白い目で見られ続ける数年間を過ごした僕も、晴れて社会人になった。昔からの夢だった出版業界へ就職することができたため有頂天になっていた。希望した編集部ではなくシステム部門だったが、池袋のデザイナーズマンションに住み、休日は乗馬やデートを楽しみ、仕事も順調。それなりに満ち足りた生活だった。
 そんな日々が、あることがきっかけで全て崩れ去ってしまった。
 その後の詳細は本文に譲るが、簡単に書くと、僕は出版社を辞め、なぜかブックデザイナーになり、さらに長野県上田市に移住。そして、狩猟免許を取得して、散弾銃で獲物を狙うプロの猟師になった(僕の言うプロとは専業ではなく免許取得者のこと。だから僕は正確には「ブックデザイナー 兼 猟師」)。我ながら波乱万丈の人生である。
 なぜ、こんなことになったのだろうか? それを振り返るとともに、僕が今ハマッている、ひとり気ままに狩猟をする「単独猟」の魅力について存分に語っていきたい。

●目 次

はじめに

1 東京のデザイナー、長野で猟師になる
 1・1 東京でデザイナーとして働く日々
 1・2 大地震と大雪
 1・3 長野県上田市に移住する
 1・4 阿部寛に似た猟師

2 素人、初めて狩猟に同行する
 2・1 見習い猟師としてチーム猟に参加
 2・2 里山はダンジョンだった
 2・3 孤独な冒険者、すぐに遭難する
 2・4 鹿一頭をもらう
 2・5 生きた鹿にもう一度会いたい

3 魅惑的な「単独猟」の世界
 3・1 初めて鉄砲を撃って仕留めた獲物
 3・2 自分ルールを貫きたい
 3・3 たった一人の冒険。単独猟デビュー
 3・4 首なし死体に思うこと
 3・5 獲物を撃つ覚悟が足りない
 3・6 一人で解体し、泣いた日

4 狩猟で獲った肉をおいしくいただく
 4・1 素人ジビエの楽しみ方
 4・2 冒険狩猟を楽しむ
 4・3 風呂場が肉でいっぱいに
 4・4 鹿の脚をかじる猫
 4・5 鹿を担いで家出

5 猟をするということ、僕から息子と娘に伝えたいこと
 5・1 狩猟のはじめ方
 5・2 あの目が怖い
 5・3 僕から息子と娘に伝えたい「命の授業」
 5・4 いつか家族で狩猟を楽しみたい

巻末コラム
 1 狩猟免許を取ろう
 2 危険人物ばかりの話
 3 精神疾患診断書を何度も出した話
 4 猟師はプロになってからがスタート
 5 デザイナー、「猟装」にこだわる

おわりに

●著者紹介

川端俊弘(かわばた としひろ)

一九八一年生まれ。二児の父。出版社勤務を経て一からデザインの勉強をし、デザイン事務所 WOOD HOUSE DESIGN を立ち上げる。二〇一二年に長野県へ移住し、地方だからこそできる一生モノの趣味を求めて狩猟免許を取得。デザイン事務所を里山のふもとへ移転。二〇一八年中を目標に、狩猟採集やグリーン・ツーリズム活動を行うアウトドア団体「山学ギルド」を結成予定。

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