著者:丹羽 豊
¥800¥0

 本書は、私なりの『不登校対応マニュアル』です。
 2014年に大阪市天王寺区の地域情報誌「うえまち」の編集局から、不登校問題に関する保護者向けコラムの連載をスタートし、2020年の休刊に至るまでの75回分を一冊にまとめました。
 
 私はこれまで多くの不登校相談に携わってきました。今から17年前、小泉内閣の構造特区政策による通信制高校の新規立ち上げに関わったことがきっかけです。不登校で悩む子ども達もさることながら、その保護者も傷付き疲弊していく現実に直面する日々の連続でした。不登校の原因は様々で複雑にからみあっています。けれども実は、復学などへの克服のプロセスには一定の法則があることが分かってきたのです。

 不登校段階を細分化して、その段階ごとに取り組む課題を設定している相談事例はたくさんあります。しかし、保護者には克服までの道のりが長く感じ、より困難さを感じてしまうのです。そこで私は、不登校克服過程をよりシンプルに捉えることで、家族の取り組みが明確化され、保護者が見通しを持って子どもに向き合っていけるのではないかと考えるようになりました。

 不登校をシンプルに捉える一定の法則とは、不登校克服の過程を細かな段階に細分化するのではなく、大きく3段階に分類することでした。わが子の不登校の現実を受け入れ、今わが子がどの段階にいるのかを認識することで、取り組むべき具体的な親の行動を明確にするという考え方です。そして、日常生活の延長線上に位置する「不登校克服」の日々に見通しをたてるというものです。

 第1段階では、不登校になった子どもは、海底の深海魚のごとく、静かに沈んでいます。考えすぎる世界に入り落ち込み、人の目を気にし、あまりご飯を食べなくなり、親との接触も避けようとします。「死にたい」等、家族が戸惑う言動もみられます。親も登校を促すべきか、不登校を受け入れるべきか、激しい葛藤と錯綜の毎日が続く最も苦しい時期です。しかし、親はまずわが子の不登校の現実を受け入れなければなりません。わが子がストレスを抱え続け、自信をなくしてしまっていることに、実は助けを求めいているんだと認識することが必要です。

 この段階では何よりも目指すは、親子の普通の会話の成立なのです。不登校という非日常の中でも、あくまで日常を演出する必要があるのです。学校や将来についてなどの会話はタブーです。たとえどんな状態であっても「あなたが大切だ」とわが子に伝えるために、日常の他愛のない会話が重要なのです。不登校である非日常は、子ども自身が一番傷付いています。その状態をさらに追い詰めるのではなく、「ただあなたが元気であれば、それでいい!」、という親の想いをただ伝え続けることこそが、日常の普通の会話なのです。
 勿論すぐに成立しないこともあります。数ヶ月掛かることもありますが、この第1段階をクリアしない限り、次へのステップアップはありません。

 日常会話が成立する関係ができたら、第2段階に入ります。
 第2段階では、まず外出を促します。もちろん一人での外出は不可能ですから、家族で外食に行く、買い物に行くなど、外出の機会を多く作ります。外出ができたという成功体験を重ねることで小さな自信を積み上げていきます。
 同時に、お手伝い等家庭での役割を持たせることです。この家庭の役割=お手伝いをすることで家族から感謝されて、家族から認めてもらうことで自己肯定感を上げていくことができます。また、自宅でゲームなどに明け暮れている生活から、活動する時間帯も増えてきます。これもまた自信の積み重ねができます。自宅での生活がやや快適になってくる、深く考えすぎてしまったりネガティブな思考になったりすることから抜け出す大切な時期です。

 そして第3段階では、一人での外出ができるようになります。サードプレイス(自宅や学校以外の自分の居場所)を見つけることができるかがポイントです。快適になってきた彼らは、小さな自信を積み重ね、不登校だけれど、日常の生活を過ごせるようになった自分を受け入れます。また親も同様に受け入れてくれたことに安心を得ます。すると、再び外の世界へ自ら興味を持ち、サードプレイスへと向かい始めるのです。サードプレイスは、習い事に通う、フリースクールへ通う、通信制高校に転校するなど、人それぞれですが、具体的な行動ができるようになってきます。この3段階を経て、不登校克服が目に見えてくるのです。

 しかし、現実には各段階において不登校生徒の様々な言動、様相が存在します。
 家族と食事をしてくれない、スマホ依存のような生活、反抗的で投げやりな態度、保護者への暴言や暴力、昼夜逆転等、これらの言動に対して保護者は対応の引き出し(マニュアル)をたくさん持つべきなのです。なぜなら、わが子が前述した各段階のどこに位置しているかと、目指すべき生活の変化の到達点を理解したとしても、日常の気になるわが子の言動につぶさに対応できなければ、疲弊しストレスを貯め続け、やがて対応への意欲をなくしてしまうからです。

 本書は、「不登校対応マニュアル」の意味合いを持っています。いつも保護者の手元においていただける参考書のようなものになることができれば嬉しく思います。
 最初から順番に読み進めなくてもかまいません。気になる項目から自由に読み進めていただきながら、「わが子を見守る」「わが子に寄り添う」ことの本当の意味を理解いただき、「それならできそう!」「今日からやってみよう!」と前向きに考えていただけるようになればと思っています。

 不登校をシンプルに捉える考え方と様々な対応ノウハウを理解し実践していただけることで、多くの不登校生徒の生活が改善され、彼らが自信を取り戻し、再び学び舎などで幸せを感じながら明るく楽しい生活を送ってくれることを願います。

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